花形12面体とペンローズタイリング

(2025年7月11日)研究室の片付けをしていて,中村義作先生(故人)手作りの花形12面体と別宮さん(故人)の菱形30面体の地球儀がでてきたので,写真にとって整理しました。

花形12面体(菱形60面体)

花形12面体

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展開図

は,5枚の黄金菱形(Golden rhombus) 

黄金菱形(対角線の長さの比がτ)

の辺を重ねた「花形」を12枚合わせた,5×12=60個の黄金菱形の面を持つ60面体です。花形12面体は,それゆえ,菱形60面体(Rhombic Hexecontahedron)とも呼ばれます。

花形12面体の頂点は3種類あります。花形の中心と尖った頂点,凹んだ頂点です。共有する花形の枚数から,それぞれの頂点は,12個,5×12/3=20個,5×12/2=30個,合計62個です。

扁長黄金菱形六面体A₆

花形12面体は,黄金菱形6枚を面にもつ扁長黄金菱形六面体(Acute Golden Rhombohedron)A₆

A₆:鈍角と鋭角が区別できるよう,黄金菱形の鈍角と鈍角を破線で結んだ

の面と面を貼り合わせて作ることもできます。まず,頂点8と6を結んだ辺8-6の回りにA₆を72°ずつ回転してコピーすると,立体的な花形

ができます。花形の中心が頂点8です。

次に,5個のA₆の辺7-8のまわりに同じように72°ずつ回転してコピーを作ると,立体的花形の側面に5つの花形ができます。側面の花形の中心は頂点7です。この側面の5つの花形で囲まれた背面は,立体花形からA₆を2つ取り除いた,不完全な立体花形に囲まれた,点8を中心とする花形

になっています。ここに立体的花形をはめると,側面の不完全な立体花形が補完されて,側面に花形が5個現れます。花形の枚数を数えると,はじめの立体的花形に6個,裏面にはめた立体的花形に6個の花形,合計12枚となり,花形12面体が完成したことがわかります。

この背面に立体花形をはめる操作を回転で行うには,まず,最初のA₆を辺7-8のまわりで2×72°回転して不完全な立体花形へ移動します。頂点6が不完全花形の中心になります。そこで,次に,移動後の辺6-8のまわりに3×72°回転すれば,不完全な花形のA₆が欠落した空所,すなわち,裏面にはめる立体花形へ移動するので,最初の辺6-8のまわりに72°ずつ回転して4個のコピーを作ります。

なお,A₆の6面のうち3面は貼り合わせる面,3面は表に出るので,花形12面体はA₆を20個,面と面を貼り合わせて作られます

サボテン

中村義作先生の花形12面体は,大きな花形12面体一つと,大きさがτ⁻³(τ=1.618034 は黄金比)の3種類の小さい花形12面体です。



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小さい花形12面体の一つは,上記立体的花形で,大きな花形12面体の中央にぴったりはまります。



もう一つは花形12面体からA₆を一つ除いたもの




で,大きな花形12面体の角にぴったりはまります。もう一つの小さい花形12面体は,大きな花形12面体の凹んだ頂点にはめます。

これは,花形12面体からA₆をいくつか取り去った形ではありません。

こうして,3種類の小さい花形を,大きな花形12面体の62個の全ての頂点に付加したものが,論文の「2重サボテン」です:

これを,面を取り除いて,無限遠方から眺めた図です:

付記:翻訳論文に図が入っていなかったので,図を追加して,読み直していたら,前半の第1節に当時私が群論を理解していないゆえの間違いを発見しましたので直しました。8の字解の研究で2002年当時よりは群論の理解が深まったようです。

菱形30面体(Rhombic Triacontahedron)



A₆の鈍角の頂点は,どれも鈍角2つと鋭角1つが集まってできていることに注目すると,A₆の頂点を組み合わせて,菱形30面体の鈍角3つの頂点を作れない事がわかる。よって,菱形30面体は,A₆を組み合わせて作ることはできない。

なお,図(黄金菱形は除く)はMathematica 14.1で作成しました。Notebookはここにあります。